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高田 弘
原子核研究, 41(3), p.39 - 47, 1996/06
68MeV陽子を厚いC、Au及びCuターゲットに入射した場合の中性子スペクトルについて、NMTC/JAERIとMCNP-4Aから成る高エネルギー核子・中間子輸送計算コードシステムを用いて、前平衡過程を導入した場合(3STEPオプション)と反射・屈折及び媒質効果を考慮した核子・核子散乱断面積による原子核の平均場の効果を導入した場合(ISOBARオプション)の2通りの解析計算を行った。3STEPオプション計算は45°より後方では全エネルギー範囲について実験と良く一致したが、0°~30°方向では20MeV以上の中性子放出を実験よりも極端に大きく評価した。一方、ISOBARオプション計算は、3STEPオプション計算に生じた前方角度の不一致を良く改善し、後方角度でも実験とかなり良く一致した。この結果、原子核の平均場の効果を考慮することにより、NMTC/JAERI-MCNP-4Aコードシステムの計算精度の向上が確認できた。
岩元 大樹; 西原 健司; 岩元 洋介; 橋本 慎太郎; 佐藤 達彦
no journal, ,
粒子輸送計算コードPHITSは、加速器駆動核変換システム(ADS)の核設計において重要な役割を果たしている。PHITSのバージョン2.52以降、PHITSの核反応モデル(核内カスケードモデルINC)の標準仕様がBertini INCからLige INC version 4.6 (INCL4.6)に変更された。INCL4.6は、モンテカルロコードで使われる核反応モデルを検証する核破砕反応ベンチマークにおいて最も優れたモデルであることが示されているが、PHITSでは独自の脱励起モデル及び核反応断面積のパラメータを使用しているため、PHITSに組み込まれたINCL4.6についても検証が必要である。さらに、これまでのADSの核設計では旧モデルを用いて実施していたため、核反応モデルの変更は、従来のADSの概念設計の結果に大きな影響を及ぼす可能性がある。本研究では、PHITSの新旧標準仕様であるBertini INCとINCL4.6及びPHITSに組み込まれている核反応断面積系統式(Pearlstein-Niitaの式及びSatoの式)の相違によるADSの核特性値の影響を調査した。解析の結果、核反応モデルの差異はビーム電流に大きく影響し、モデル間で10%を超える差異が生じることがわかった。この差異はビーム窓の核特性値にも影響を与えることがわかった。さらに、これらの差異は、核破砕反応による放出中性子の差異に起因していることを明らかにした。
橋本 慎太郎; 佐藤 達彦; 仁井田 浩二*
no journal, ,
PHITSをはじめとする粒子輸送計算コードは、様々な放射線の挙動を模擬できるため、加速器施設等の放射線遮へい計算において利用されている。数100MeVの中間エネルギーの陽子入射反応は、これらのコードに組み込まれたINCLなどの核内カスケードモデルによって模擬されており、2次粒子として放出される中性子のスペクトルをよく再現することが確かめられている。しかし、前方に放出される中性子スペクトルについては、入射エネルギーから数10MeV低いエネルギー領域で実験値を計算値が過小評価することが指摘されていた。そこで、Evaluated Nuclear Structure Data File (ENSDF)に基づいてアイソバリックアナログ共鳴やガモフテラー共鳴の寄与を考慮する共鳴断面積モデルを開発し、INCLの結果と組み合わせることで前方の中性子スペクトルの再現性を向上させる新規モデルを考案した。新規の組み合わせモデルが、鉛標的の陽子入射反応における中性子スペクトルを再現することを確認しており、開発したモデルを用いることでPHITSによる遮へい計算の信頼性が高まることが期待される。
岩元 大樹; 明午 伸一郎
no journal, ,
放射線挙動解析コードPHITSは、加速器駆動核変換システムや核破砕中性子源施設等における放射能・被曝線量評価及び施設の遮蔽設計に重要な役割を演じるが、PHITSの核破砕反応を記述するモデルINCL4.6/GEMは核分裂生成物の収量を大幅に過小評価することが知られており、モデルの高度化が求められている。本研究では、核分裂生成物の収量予測に重要なパラメータとなる「核分裂確率」を現象論的に記述するモデルを提案し、このモデルを粒子輸送計算コードPHITSに組み込まれている脱励起過程計算コードGEMの高エネルギー核分裂モデルに適用した。実験値との比較の結果、からのサブアクチノイド核種に対する陽子入射, 中性子入射及び重陽子入射反応に対して、核分裂断面積を統一的に予測でき、その予測精度は従来モデルよりも大幅に改善することがわかった。
橋本 慎太郎; 佐藤 達彦
no journal, ,
PHITSに組み込まれた核内カスケードモデルINCLは、数10MeVから数GeVの核子が引き起こす様々な核反応を精度良く記述する。しかし、入射粒子が標的中の陽子をはじき出すノックアウト反応を過大評価する傾向があり、これが標的表面にある陽子の運動量分布に原因があると指摘されていた。そこで、PHITSによる計算精度を向上させるために、標的の外殻核子を1粒子波動関数で記述し、その空間分布をフーリエ変換して求めた運動量分布を導入した。従来のINCLでは表面核子が高い運動量に偏った分布をもっていたが、1粒子波動関数を基にした分布の導入により、高運動量成分が減少してノックアウト反応が抑制されるようになった。本改良の結果、陽子入射時の陽子ノックアウト反応を再現することを確認しており、PHITSによる計算結果の信頼性を向上させることが期待される。
明午 伸一郎; 中野 敬太*; 山口 雄司; 大辻 賢一*
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加速器駆動システム(ADS)や大強度陽子加速器において、数GeV領域の(p,xp)反応の実験データの比較検討は重要となる。これまで、当グループではプラスティクシンチレータを用いたカロリメトリックな測定によるスペクトル測定を実施したが、数GeV領域の測定では、シンチレータを用いた測定では困難となる。そこで、チェレンコフ放射に基づくスペクトル測定に着手した。また宇宙利用においても、太陽フレア等で発生する陽子のスペクトル測定が重要となり、チェレンコフに基づくスペクトロメータの開発が進められている。チェレンコフで発生する光子数は、陽子の光速比()に依存する応答を持つため、この応答特性をJ-PARCの加速器施設のダンプ入射窓の散乱陽子を用いて測定した。測定の結果、ほぼ予想された応答関数となることが示された。